韓国小説の書評を書いてみる?『第12回K-文学レビューコンクール』開催

2019年に引き続き盛り上がりを見せる韓国文学。
2020年も『K文学レビューコンクール』が開催されるそうです!

今年の対象作品と応募方法などについてご紹介したいと思います。

 



『第12回K-文学レビューコンクール』

K-文学レビューコンクールは韓国文学翻訳院の後援のもと、K-BOOK振興会が主催しているコンクールで今年で12回目を迎えます。

第12回K-文学レビューコンクール
応募締切 2020年9月13日(日)23:59まで
レビュー本文文字制限 800~1000字以内
応募方法 Wordにて作成、応募フォームよりアップロード
表彰など 最優秀賞1名、優秀賞2名、出版社賞8名

2020年11月には都内で表彰式もあります。

 

課題図書一覧

対象はこの1年間に刊行された下記の韓国文学8作品。

『あの夏のソウル』(그 여름의 서울)

 

イ ヒョン 著
下橋 美和 訳

影書房
定価¥2200+税

1950年6月人民軍治下のソウル、そこで熱い夢を見た人々がいた。 

朝鮮戦争真っ只中の光景を子供の視線で綴った『あの夏のソウル』。 朝鮮戦争勃発直後、人民軍に占領されたソウルを背景に、運命を切り開くために汗を流す子供たちの話である。

ソウルが人民軍に占領された日、親日家庭出身のファン・ウングクは家族と離れ一人でソウルに残る。 一方平壌の名門校に通っていたコ・ボンアは南朝鮮の監獄に収監中だった革命家の母が変節後に亡くなったという知らせを受け大急ぎでソウルに向かう。 米軍の空襲が続く渦中にもソウルは少しずつ日常の姿を取り戻す。 しかし戦争が固着状態に入ってウングクとボンアの運命が揺れ始める。

 

アーモンド』(아몬드)

ソン・ウォンピョン 著
矢島暁子 訳

 

祥伝社
定価¥1600+税

怪物の僕が別の怪物に出会ったー

感情を感じることができないある少年の特別な成長を描いた『アーモンド』。
感情を感じることが困難な16歳の少年ソン・ユンジェと暗い傷を持つゴニ、彼と反対で澄んだ感性を持つドラと、ユンジェを助けたいシム博士の間で繰り広げられるストーリーは、他人の感情を理解するということがどれだけ難しいか、そして難しくてもどれだけ大事なことなのかもう一度考えさせる機会をくれる。

感情表現ができない病を患っている16歳の少年ソン・ユンジェ。 もともと‘アーモンド’と呼ばれる扁桃体が小さく、怒りも恐怖も感じることができなかったが、母と祖母に愛情深く育てられたおかげで問題なく過ごしてきた。しかし、17回目の誕生日だったクリスマスイブに起こった悲劇的な事故で家族を失う。

一人残されたユンジェの前にゴニが現れる。 遊園地で母とはぐれ行方知れずとなり、13年ぶりに家族の元に帰って来たゴニは怒りの感情に満ちた子供だった。
ゴニはユンジェを苦しめ、焚き付けようとするが、感情の揺らぎのないユンジェの前でむしろ途方に暮れてしまう。

その後、二人の少年は他人が理解することができない特別な友情を育み、ユンジェは少しずつ内面の変化を経験していくが……。

 



 

惨憺たる光』(찬담한 빛

ペク・スリン著
カン・バンファ訳

書肆侃侃房
定価¥1833+税

二つの世界が混在する表題作<惨憺たる光>。
映画雑誌記者として働くジョンホは、映画祭参加のために来韓したドキュメンタリー監督アデル・モナハンへのインタビューのため、彼女に会いに行く。やっとのことで実現したインタビューの場で、アデルがトンネル恐怖症になった理由について聞くことになったが、その瞬間ジョンホは6か月になる胎児が妻のお腹の中で息を止めてしまって以来、夫婦仲がどう変わっていってしまったかを思い出す。妻が感じた苦痛を受け入れられなかったジョンホが何をしたか、アデルの声を通じて聞く。そして、光の中でたちどころにアデルは治癒し、ジョンホは大雪のように降り注ぐ太陽の下で得体のしれない恐怖を初めて味わうが…。

 

 

『短編集ダブル』サイドA(더블 side A)
『短編集ダブル』サイドB(더블 side B)

パク・ミンギュ著
斎藤 真理子訳

筑摩書房
定価¥1700+税

著者の初小説集『カステラ』から5年ぶりに刊行された2つ目の小説集。
作家特有の独特なスタイル、マイノリティー的感受性、奇抜な想像力を豊かに盛り込んだ9編の小説を収録。想像と現実、変則と伝統を全て網羅しながら、それを自由自在に駆使する著者の個性を生き生きと味わえる作品集。

 

 

『中央駅』(중앙역)

キム・ヘジン著
生田美保訳

彩流社
定価¥1500+税

野宿生活者となったある若い男の観察で物語が始まる。若い男が駅の横にある広場に立ち入る。路上生活者になったばかりの彼に野宿は不便だ。そんな彼に老いた病気の女が近づく。彼女はネズミが恐ろしく、路上は寒いからと彼の胸に抱かれて眠るが、夜の間に彼の全財産を盗んで逃げてしまう。彼は怒りカバンを探そうと騒ぐが、彼が本当に恋しかったのは彼女の肌だった。数日後、彼は彼女を見つけ、カバンを返すよう責め立てるが…。

 

 

となりのヨンヒさん』(옆집의 영희 씨)

チョン・ソヨン著
吉川凪訳

集英社
定価¥1800+税

チャン・ソヨンの小説集『となりのヨンヒさん』。となりに異星人が住んでいたら?恋しい彼の顔が海に浮かんでいたら?遥か宇宙にジャンプしたら?素朴な日常に潜り込む奇妙なわくわくを盛り込んだ作品を収録。2部で構成されており、1部には登壇作<デザート>をはじめ11編、2部には<カドゥケウス物語>という題名での連作小説が収録されている。

 

 

広場』(광장)

崔仁勲 著
吉川凪 訳

クオン
定価¥2000+税

終戦後、韓国現代文学を代表する作家であり生きる知識人の象徴である崔仁勲の代表作『広場』。

第二次世界大戦の終戦と朝鮮戦争、分断に続く韓国近現代史と軌を一にする主人公イ・ミョンジュンの深い渇望と苦悩を描いた作品で、南北間の理念、体制に対しての冷徹でありながらも熾烈な省察を盛り込んでいる。命の使い捨てに対しての鋭い認識、個人と社会、国家間の緊張と葛藤、人間の自由と愛のような本質的なテーマに対しての幅広い省察を盛り込んだ韓国文学史最高の古典である。

 

 

モンスーン』(몬순)

 

ピョン・ヘヨン 著
姜信子 訳

白水社
定価¥2000+税

マンションに停電が予告された。停電を前にテオは妻のユジンを置いて家を出た。二人の間にはしばらく会話がなく、テオは転職すらユジンと全く相談できないまま進めている。二人にも幸せだった時はあったが、子供の死をきっかけに二人の仲は停電した。テオは停電したマンションの中で過ごすのがつらく、ダンスというバーへ行く。一人で訪れたバーで昔のユジンの職場の上司と偶然に会い、ぎこちないながらも会話を始める。ユジンの元上司と話をしていくうちにテオはだんだん過去を思い出す。テオは子供が亡くなった日、子供を家に置いて出ていくユジンを見た。ユジンを追ったテオは彼女が入ったであろう『ダンス』というバーのドアの前に立ったものの、どうしても開けることができなかった。家に戻ったテオは子供が寝ていることを確認してすぐに家を出てバーへ向かったが、そこにユジンの姿はなかった。ユジンとテオが子供を置いて家を出た間に子供が亡くなる悲劇が起きー。

以上の作品が課題図書になります。中でも『アーモンド』は日本でもかなり話題になった作品ですね。
最近は読んでも読んでも追いつかないほど韓国文学作品が出版されていて、気軽に触れられるのが嬉しく思います。
ぜひ手に取って読んでみて下さい^^